手描きの伝統を守りつつ、匠の技で新たな商品にも挑戦

大阪府下で唯一、全国でも数少ない手描き鯉幟工房。149年もの歴史があり、現在は六代目の 田武史氏が伝統の技を継承している。「伝統工芸士」の武史氏が、一枚一枚丹念に描き上げる鯉幟は、まさに匠の技の結晶。空を泳ぐ鯉の勇壮な姿に魅了される人も多い。1986(昭和61年)には「大阪の伝統工芸品」に認定された。

堺五月鯉幟工房「高儀」

玩具商を営んでいた初代が、紙鯉をヒントに和凧職人につくらせたのがはじまり。真鯉に金太郎がまたがる図柄は、明治末期に 儀が考案して人気を博し、すっかり鯉幟の定番となった。手描きの最大の特徴は、型を使わないこと。特注の刷毛を数十種類使い分けながら、世界中から探し集めたこだわりの顔料で、1枚1枚を丹精込めて描いていく。力強さと美しさを併せ持つ、色鮮やかな鯉幟は評価も高い。1品として同じものができないのも、手描きならではの魅力と言えるだろう。
プリントの鯉幟が主流となり、廃業寸前に追い込まれたこともあったが、「大阪の伝統工芸品」認定をきっかけに広く知られ、注文が増えた。新たなオリジナル商品づくりにも余念がない。マンションなどでも手軽に飾れるよう、手描きの技法を使った掛け軸や屏風、額絵、ミニチュアの鯉幟、鯉の置物などを考案。つくる・売るの両立をめざし、実演販売にも積極的に参加している。

企業概要